身代わり王子にご用心
初めて厨房に立って自分の手で食材に触れる。
(初めて私のお料理を出すんだから、頑張らなきゃ)
とはいえ、おじいちゃんは持病がある。それを考えたら、今のメニューよりも相応しいものがある、と冷蔵庫を開けて準備に取りかかった。
『これは何だ? 変わった味だが……』
『それは、味噌漬けの豚を更に味噌牛乳の白菜入りスープで煮たものです。豚肉にはビタミンBが豊富に含まれていますから、疲労回復にはもってこいです。
それから、こちらは豚のレバーを地元産チーズとともに米粉でフライにしたものです。
レバーにはビタミンB12が含まれています。ビタミンB12は神経痛……特に頭の痛みにはよく効くようですから、メニューに加えてみました』
『……なるほど』
おじいちゃんはカラトリーを置いてしまうから、もしかすると美味しくなかった? と焦ったのだけど。
『……あの時の私が神経痛だととっさに判断して、あのような処置をしてくれたのだな』
『はい……お恥ずかしながら、私も昔持ってましたので』
大谷さんから逃れられて、悪夢も減った中学生から高校時代。ひどい偏頭痛に悩まされてたから。おじいちゃんの苦しみはよくわかった。だから、なおのこと放っては置けなかったんだ。