身代わり王子にご用心



あっという間に時間は流れて、いよいよ明日が結婚式という日。私は20代最後の日をスーパーで過ごすことにした。


本当ならレストランの方も顔を出したかったけれど、警備上の理由からはずされてしまって。

わずか2ヶ月で辞めてしまって申し訳ないと思うけど。今はインターネットメールやSNSもあるし、メニューを考えたりする手助けはできる。


「カイ、このおもちゃって。もしかするとクレイ·アニメーションに出てたクマさん?」


おもちゃ売り場にどこかで見たクマのぬいぐるみがあって、カイに訊ねればそうだと返ってきた。


私はその黒いぬいぐるみを抱き上げると、万歳させる形で腕を上げた。


「……そういえば、カイ。上映会で、あなたが作った雪のうさぎの話を見たよ」

「それは……」


カイは一瞬何とも言えないような顔をして、手を顔にやった。


「……まさか、見られるとは思わなかったが。あの雪うさぎは……自分なりの贖罪だった」


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