身代わり王子にご用心
「贖罪?」
「ああ……」
カイはクマだけでなく、短編に出てたライオンのぬいぐるみを抱き上げる。
そして、それをうさぎの白いぬいぐるみに重ねて見せた。
「……24年前におまえと初めて出逢った、それがきっかけでおまえの人生を狂わせてしまって……。情けないことだが、オレは夜の眠っているおまえにしか逢う勇気がなかった。
眠っているおまえに好き勝手に話しかけて……。
高宮の圧力であの女の父親の不正を暴き、潰したのも自己満足だったかもしれないが。せめてそれだけはしてやりたかった」
「……え、潰した?」
何だか聞き捨てならない言葉をカイから聞いたような……。
「まさか……大谷さんの実家が没落したのって」
「……あの女がおまえをいじめていた時、オレはまだ4つのガキに過ぎなかったから、何もできなかったが。高宮に渡りはつけておいた。6年後にお見合いさせられそうになった時、掴んでいた証拠をマスコミにリークして完全に潰した。二度と悪さができないようにな」
「………」
何て言うか……いろいろともう、どこからつつけば良いのやらわからないけれど。たぶん今は、大人しく聞くのが一番と思って口をつぐんだ。
カイは後ろから私を抱きしめて、そっと腰に手を回す。
「……本当なら、ヤツら一族を地上から永久に消し去りたいくらいくらい頭にきていた」
ちょっと、待ってください。それってナチュラルに“抹殺宣言”になりませんか?
どれだけ物騒なことをおっしゃるんですか、この王子様は。と思ったけれど。
抱きしめた腕が微かに震えてると知って、何も言えなくなった。