身代わり王子にご用心




「で、でも……私は」

「言い訳するな!相手から返ってこないのは自分が悪いんだろう。きみはそうやって全てを相手になすりつけるのか!?そんな無責任な態度でよくもまあ働いてるつもりだな!!幼稚園児である俺の娘の方が百倍ましな挨拶をするぞ」


フロア長というのは二階の売り場総括の責任者で、副店長に相当する。平社員に過ぎない私では、理不尽な言いがかりにも反論できない。


そんな時はグッと堪える。いつものように、言いたいことを飲み込んで。頭を下げた。


「すいませんでした。気をつけます」

「当たり前だ! 今度同じミスをしたらクビにするからな」

「……はい」


私が怒られていても、周りはクスクス笑いながらひそひそ話をするだけで助けてはくれない。今別のフロアにいる藤沢さん以外は。


……やっぱり……夏にあった事件で、私の立場がすっかり無くなってしまった。


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