身代わり王子にご用心
「あははは! わたしが桂木さんと? あり得ませんって~」
ダイニングで朝食を摂っている最中、バンバン、と藤沢さんに背中を叩かれ、危うくお味噌汁を吹き出すところだった。
「わたしがなかなか起きないから、カッツーが起こしに来ただけですよ」
「まったく……未来の寝起きの悪さは想像以上ですから」
朝から疲れた顔をした桂木さんは、心なしか窶れていつもの爽やかオーラが霞んで見えた。
というか、藤沢さん。桂木さんをカッツーって……。
「いいじゃん、いいじゃん! 朝から運動出来たと思えば」
藤沢さんはカラカラ笑うけど……。
このマンションは基本的に防音設計だから、離れた部屋の物音はよほど聞こえない。服装と髪が乱れるほどの起こし方って……一体どんなのやら。 想像もつきませんよ。