身代わり王子にご用心
「そういえば、桃花さん。今日は雑貨の在庫チェックの日でしたよね?大丈夫そうですか?」
「あ、うん……そうだったね」
藤沢さんが言うように、うちのスーパーでは週に一度、決まった曜日にフロア毎に在庫をカウントする作業がある。
半年に一度ある棚卸しの作業の負担を軽減するために、普段からマメに在庫数を管理して差異の確認をしておくということ。
正確にレジを打てばデータ上の差異は出ないはずだけど、返品を受けても処理をしなかったり。あるいは盗難や、お客さんが商品を戻す時にまったく違う売り場に置いていったりで。在庫が狂うことは日常茶飯事。
細かな作業は別に苦にならないけど、それよりも他の従業員の目が嫌だった。
はぁ、とため息を着けば、桂木さんが箸を置いて私に真面目な顔を向けた。