身代わり王子にご用心
マンションで同居してる人のうち、プライベートを話してくれるのは藤沢さんくらいだ。一見フレンドリーな桂木さんさえ、私には何も話してくれない。
彼はたぶん、藤沢さんにはきちんと自分のことを話してるだろう。偽とはいえ恋人をする以上、お互いをある程度知って理解しないと不自然になるから。
(だからって……寂しい、って思ってちゃダメだよね。桂木さんは好意で家なしになりそうな私を住まわせてくれてるだけだし)
あの高級マンションが賃貸だとしたら、家賃は月に何十万以上するはずだ。下手すると私の年収より高いかもしれない。
(やっぱり、月に幾らかでも用意しておこうか。引っ越す時にどさくさ紛れに渡せば……)
いくらハウスキーパーがわりに家事を引き受けているとはいっても、それでも住んでる家賃代わりになるとは思えない。3ヶ月分の家賃として10万は用意しておこうか、と決めてますます倹約をしないとと肝に命じた。