身代わり王子にご用心
「なにか、欲しいものはあるかな?」
私が声を掛けただけなのに、ビクッと体を震わせて青い顔でこちらを見る。
いやはや……そんなに不審者を見るような眼差しにならなくても。
声の掛け方が不味かったかな、と反省しつつ。このまま立ち去る訳にはいかなくて話を続けた。
「私はここの売り場を受け持ってるひとだから、わからないことがあればどんどん訊いてね」
「店員のおばちゃん?」
「おばちゃ……ま、いいけど」
そりゃ、早く結婚していればあなたくらいの子どもがいてもおかしくはありませんが。子どもの悪意のない言葉と流し、なるべくフレンドリーな笑顔を作ってみた。
……で、なぜ更に顔を青ざめさせるんですか? そこの君。
この笑顔を練習した時に、鏡が割れたというのもきっと気のせいでしょう。
割れた鏡は家で一番高価な品でしたがね、ええ。