身代わり王子にご用心
最低な日2
「やっぱり、これにする!」
美咲ちゃんが長く迷った末に手にしたのが、やっぱりガーネットのペンダントヘッドだった。
「ママがね、パパからもらった赤色の指輪をとっても大切にしてたの」
そう話してから押し黙ったのは、たぶんその指輪がもう手元にないからだろうな。
幼い子どもだって、大人の事情を薄ぼんやりとだけど理解し、大変と感じ取る。そして、子どもなりに胸を痛め頭を悩ませるんだ。
(うちも……問題があったからな)
フッと思い出す。父は見た目がよかったけど嘘つきな上に、浮気は男の甲斐性とうそぶくような人間だった。だから、家のことは放ったらかしで。ほとんど母子家庭みたいな状況だったんだよね。
奔放で大胆で自由な男に、女性達は魅せられたのかもしれないけど。
子どもの私からすれば、父は無責任で自堕落で嘘つきの、最低な人間だった。