身代わり王子にご用心
「後で10円玉は全部事務所に両替に行きますけど」
ドロアーから溢れることが嫌なら、ときちんと反論したつもりだけど。大谷さんは眉を寄せて腕を組み私を呆れたように見て大げさなため息を着いた。
「あなた、本当にチーフやフロア長の話を聞いてたわけ? とんでもない記憶力だこと。
いい? 同じ金額の硬貨は21枚以上受け取っちゃいけないの。法律できちんと決まっているんだから、守らなきゃ法律違反ってことになるの」
まったく、と大げさに腰に手を当ててチラチラと周りを見ながら、大谷さんは続けた。
「チーフだってレジを打つ時は同じ硬貨を21枚以上受けとるな、って口を酸っぱくして言ってたでしょう。本当にあなたは昔から忘れっぽくてダメな人間ね。もしかすると、商品を盗んだことも都合よく忘れてなかったことにしたんじゃない?
そんないい加減な人間だから信頼もされなくて、責任ある仕事なんて任せられないのよ」