身代わり王子にご用心




大谷さんはわざとらしく大きな声で私をあげつらう。


さっき高宮さんを笑ってた学生アルバイト2人が、私を白い目で見てひそひそ話を始めてた。彼女達は大谷さんに可愛がられてるから、彼女のシンパとも言えるほどの立場だった。


「な、なら。私の財布から千円を両替します。それならいいですよね?」

「休憩でも必要もないのに売り場を離れるわけ? ずいぶん立派なご身分ですこと。それよりあなた、すべき仕事を終わったわけ? あんな小汚ない子どもの相手をするヒマがあるなら、きちんと仕事をしなさいよ!」

「でも……」

「ごちゃごちゃ言わないで! ただの平社員のクセに、何様のつもりよ?
ダンナに言ってクビにしてもらうけど、言いたいことがあるなら言いなさいよ。ほら!」

「……」


クビをちらつかせられると、グッと堪えるしかない。それを見た大谷さんは、勝ち誇ったように顎を上げて言い放った。


「ほらね。ろくに反論できない臆病者のクセに、私に意見なんてしようとしないでよ。それと、その汚いお金を返してさっさと買い物を断って来なさい。あんな小汚ない子どもがいつまでもいたら、店の品位が落ちちゃうでしょうが」

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