身代わり王子にご用心
「ダメなの? なんで!?」
美咲ちゃんは困惑した様子で、返された袋をギュッと抱きしめた。
そんなふうに訊かれると、とっても辛い。自分の情けなさと不甲斐なさが責められてるようで。
「ごめんね……お金が足りなかったの」
「なんで? おばちゃん、お金足りるって言ってたよね。 嘘ついたの?」
「……」
「ママのお誕生日今日なのに! 今日はママが帰ってくるから今日渡したかったんだよ? なのにおばちゃん、嘘ついたの!?」
美咲ちゃんの大きな瞳が潤んできて、今にも涙がこぼれそうだ。
七歳児にとって1年間はとてつもない長い時間。それだけ頑張って来たのに、買えると言われたものが突然買えない、と断られたら。不信感を抱くのも当然だよね。
どんなふうに渡そうかとわくわくしながら待っていたに違いないのに……。
居たたまれなくなった私は、近くの雑貨屋さんを教えてそこで買い物するようにアドバイスした。
「本当にごめんね。明日で良いなら私が一緒に行ってあげるから……」
「今日でないとダメなのに! うええっ……おばちゃんの嘘つき!!」
美咲ちゃんは大泣きしながら売り場を離れたけど、追いかけたくても大谷さんに睨まれてそれもできなかった。