身代わり王子にご用心



「ほら、ちゃんと在庫チェック終わらせなさいよ! あなたの仕事なんだから。給料泥棒と言われたくなきゃさっさとしなさい」


在庫チェック用のタブレット端末と管理表を押し付けられ、私はトボトボと売り場に向かう。


(もっときちんと言い分を通せばよかった。私は社員で大谷さんはパートなんだから、私の方が裁量権はあるはずなのに)


美咲ちゃんの泣き顔を見ると、ズキッと胸が痛んだ。なんで言いなりになっちゃったんだろう。クビを覚悟でやり通せばよかった……と後悔しても後の祭り。


いくら小さな子どもだからと言って、買い物をするなら一人の大切なお客様には変わりがない。それなのに……私は何をしていたんだろう。接客業の従業員として、最低な対応をしてしまった。


気が重いまま在庫チェックの作業を進めて行く。時たまある高額商品の在庫チェックは後回しにしておいた。後で纏めて倉庫でチェックした方が効率がいい。


夜8時の閉店後、次は倉庫の在庫チェックだからそちらへ向かった。


< 67 / 390 >

この作品をシェア

pagetop