身代わり王子にご用心
7つ目の包装を終えて持ち上げた時、ドンッと後ろを押されて手にした包装済みの商品がテーブルの上に落ちた。
「あら、ごめんなさい。前が見えなくて~」
かん高い声でわざとらしく謝るのは、パートの大谷(おおたに)さん。私より5歳年上の彼女はフロア長の妻で、気も強いからここのボス的存在。
結婚したての6年前から働きだした彼女に、私はなぜか目の敵にされてきた。
「い、いえ……大丈夫です」
「あらら、大変ね。早くしないとまたダンナに怒られてクビになっちゃうわよ。あなた昔からのんびりして不器用なんだから」
「はい……」
じゃあ頑張ってね、と全然心がこもってない励ましをした大谷さんが去った後、テーブルから拾った包装済みの商品は包装紙が破れてた。テープカッターの上に落ちたからな……。
私はもともと人の何倍も不器用で、丁寧にやるから時間が掛かるのに……。
あまりの仕打ちに涙がこぼれそうになった。