身代わり王子にご用心
まだ今なら警備か事務所に人がいるかも、と急いでポケットをまさぐったけど。そういえば携帯電話の所持は禁止だったと思い出す。
事務所か警備に繋がる内線は、倉庫を出てすぐ横の壁だ。だから、今私が外と連絡を取れる手段はない。
足から力が抜けて、思わずその場にしゃがみこんだ。
(ひどい……大谷さんの仕業なの? そんなに私が嫌いなの!?)
彼女の仕業とは限らないのに、突然のアクシデントに混乱した私は、今までの追い打ちを掛けられた最低な気分で。無性に涙が流れてくる。
(もう……嫌だ! なんで私ばかりこんなにいじめられなくちゃいけないの? そんなに私の存在自体がいけないことなの!?)
「ふっ……く」
どうせ誰もいないなら、と私は静かに涙を流す。聞く人はいないけど、なるべく声を圧し殺して泣いた。