身代わり王子にご用心
二人きりの夜に
「……泣くときくらい、声をあげたら?」
突然後ろから声が聞こえて、飛び上がるほど驚いた。
それよりも……何よりも。
泣く姿を見られてしまった、という事実がショックで。
それも、見知った相手に。
ギシッと固まったままの私の背後で、ごそごそと何かが動く物音がした後。アクビらしき間の抜けた声が聞こえた。
「……た、た……高宮さん。どうしてここに?」
「ん~? 在庫チェックしてたら、眠くなって昼寝してた」
……仕事中に眠くなって昼寝って。どれだけフリーダムな人ですか!!
あまりに自由人な高宮さんのマイペースさに、涙なんてとっくに引っ込んでいった。
「そ、それより! 鍵を掛けられちゃ……って!!」
話してる最中に照明まで落とされ、真っ暗な世界になる。たぶん照明を管理してる事務所で大元を落としたんだろうけど。何も見えませんって!
「ん~そう? なら、アンタも寝たら? どうせ朝まで誰も気づかないだろうし」
高宮さんはそう言って寝転ぶ気配がしたけど。
私はそこまで順応性高くありませんってば!