身代わり王子にご用心
しばらく黙って床に座っていたけど、時間が知りたくなった私は、手探りで腕時計のスイッチを押す。
オレンジ色のバックライトで浮かび上がった時間は、午後10時45分。残業してる人もとっくに帰っただろう。
暖房なんてとっくに切れてるから、床からの冷気が余計に体を冷やす。寒くて体を震わせた私は、手探りで見つけた踏み台に座り体を丸めた。
(高宮さんだって寒いだろうに……平気なのかな?)
暑がりだということなら、逆に寒さには強いのかも。なんてのは私の勝手な想像だけど。
……にしても。
チラッ、と高宮さんの居そうな場所を横目で見る。もちろん、真っ暗で何も見えないのだけど。
「あの……さ、寒くないんですか? 風邪ひきますよ」
「別に。こんな程度で病気になるほどヤワな身体じゃない」
「そうですか……」
思い切って話しかけてもこんな感じで、会話が続かない。