身代わり王子にご用心
「私のどこが、逃げてきたって言うの!?」
「相手の言いなりになるところのどこが、逃げじゃないと言える?」
高宮さんは私の反発をバッサリと斬る。
「理不尽な言い掛かりに流されておいて、後で胸を痛めるなんて。都合が良すぎじゃないの?」
「……それは」
なぜ、その場に居なかった高宮さんが知っているのか、とチラッと思ったけど。美咲ちゃんに対する最低な行動を言われたら、反論なんてできない。確かにあれは全面的に私が悪かったのだし。
「自分を守るって、要するに保身だよね。アンタは自分を守りたくて、客を切り捨てた。違う?」
「……」
何も、言い返せない。
唇を噛んだ私に、彼は更なる追い打ちをかけてきた。
「だから、それが逃げって言うんだよ。おかしいと感じたら、何を言われようが言い返せばいいんだ。
自分だけで不安なら、チーフや店長に確認すればいいんだよ。そうやって戦わずに、流されて言われた通りにすれば。そりゃ楽だよね。自分で考えて行動したんじゃないんだから。
だから、アンタは誰かに餌を与えられるのを待ってる犬と同じなんだよ」