身代わり王子にご用心
まさに孤軍奮闘している最中で、意外な助けが現れたのはお昼前だった。
「水科さん、遅くなってすいません! さ、ちゃっちゃっと片付けちゃいましょう」
制服の袖を捲った藤沢さんが、ラッピングの包装紙を広げだす。
「え、藤沢さんはパンと製菓だよね?」
「ある人がお店にクレームが入ってる、って教えてくれたんです。だから、フロア長に言って特別にヘルプに来ました。
にしても……なんでこんなにヒマそうな人がいるのに、水科さんが一人で頑張らなきゃいけないんでしょうかねえ?
お喋りする以外の事ができない役立たずなら、仕事を辞めちゃえばいいのに」
可愛らしくも迫力のある笑顔で藤沢さんが毒を吐けば、気まずそうな顔をして何人かの社員が包装紙を手にした。