身代わり王子にご用心




そりゃあそうかもしれないけど。でも……いくらなんでも、犬なんてあんまりだ。


じんわりと瞼の裏が熱くなる。でも、泣くもんかと歯を食いしばって耐えた。


「……それはそうかもしれない。でも、私はこれしかないの。何もない私には、耐えて言いなりになるしか。
自分というものをしっかり持っているあなた達に、何が解るって言うのよ!」


震える声で、高宮さんに言い返す。それを彼は表情を変えずに受けた。


「知らない、そんなこと。自分というものを得る努力をしなかった甘ちゃんなアンタのことなんて、理解しようとも思わないね」


高宮さんはその場から立ち上がると、更に冷たい目で私を見る。


「そうやって全てを他人のせいにして流されてる限り、アンタは一生変わらない。変える努力をしなきゃ、いつまでも同じだよ。無い物ねだりして他人を羨んでるだけなら。
何をすればいいか考えて自分で行動をしなきゃ、何も手に入らない。
今何かを手にしてる人たちが、何の努力も頑張りもなしにそれを得たと思うなら、相当救えないね」


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