身代わり王子にご用心
心臓が、止まるかと思った。
目の前に、ブルーグレイの瞳があって。
腰に腕があって体が引き寄せられて。
顎に手を添えられた――と思えば、唇に柔らかくてあたたかい。少し湿った感触がして。
自分の唇が彼のそれと触れているんだ……そう理解した瞬間、身体の内側からドンッと殴られたような衝撃を受けた。
キス……してる?
私と、高宮さんが。
なんで……?
なんで? なんで??
思考が停止して、周りの時が止まったかと思えた。
呼吸すら忘れて、彼の彫りの深い顔だちをぼうっと見てたら。開いた口に、コロンと何かが入ってきた。
舌に乗ったあまりの酸っぱさに顔をしかめると、高宮さんの唇が心持ち上がってた。絶対、愉しそうに笑ってる。
「面白い。アンタもこんなイタズラするとはな」
「面白がらないで! それで……ひ、ひ……ひとのく、唇を」
「貰ったモノを返しただけだ」