身代わり王子にご用心
起き上がれるようになってすぐ、朝ごはんを作ろうとしたら藤沢さんに止められた。
「いい機会なので、練習のつもりでお料理にチャレンジします!」
と張り切った藤沢さんが出したベーコンエッグは、お焦げが黒でなく何故か青色に変色してた。
味を整えるために色んな調味料を入れたみたいだけど……どんな化学反応を起こしたら青色になるんだろう。
同じくお味噌汁は鍋よりも艶やかな銀色に光り輝いてますが……。
見慣れた食材の豆腐やワカメが謎の銀色の液体に浮かぶ様はシュールですよ。
もはや何をどうすれば、というレベルじゃなく。原子単位で何かを作り替えたとしか思えません。錬金術師?
私が教えながら一緒に作ると、何とか化学反応を起こさずに済むみたいだ。
「へぇ~出汁を取るだけでこんなに味が違うんですね」
お味噌汁を小皿で味見した藤沢さんは、驚いたように言う。
「そうだよ。ちょっとした手間でお料理は美味しくなるから、そのひと手間を惜しんじゃダメだから」
「はぁい! 肝に命じておきます」
藤沢さんとのやり取りは楽しい。まだ小学生の妹に教えた時を思い出す。
改めて、私は料理を作るのが好きなんだと感じることができた。