身代わり王子にご用心



デートって……


いやいや、それこそあり得ないでしょう! と私は思う。


5つも年上で、しかも人生に疲れたアラサーのおばちゃんの私が。6LDKのタワーマンションで独り暮らしするような、思いっきりセレブっぽい桂木さんと、だなんて。


だいたい、婚約者を諦めさせるために藤沢さんに恋人役を頼んだのに。その最中でこんな私と出掛けてもいいの?


オマケに、桂木さんと外出したところを知り合い(主にスーパーの)に見つかったら、ひどい噂を立てられるのは目に見えているのに。


翌朝、一張羅のワンピースとコートを羽織った私は、桂木さんが玄関から共に出ようとするのを止めた。


「あ……あの。これはまずいと思うんです。誰かと一緒に行くなら、待ち合わせには私一人で向かいますから場所を教えてください」


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