君の世界からわたしが消えても。

 ―――そこまで考えて、思う。


 あの事故が起こった日のことが、カナの記憶の中ではどうなっているんだろう、って。


 そんなこと聞けないし、どうやって確かめたらいいのかわからない。


 でも、カナが目を覚ましてわたしを初めて見た時、「無事だったんだね」とか、ミヅキを心配する言葉は言わなかった。


 一緒に事故に遭ったと記憶にあるなら、カナはミヅキにそう言っていたはず。


 カナにとってミヅキは、大事な女の子だから……。


 でも、それを言わなかったってことは、きっとミヅキは事故に巻き込まれてないことになってるんだ。


 カナだけが、ひとりでトラックにはねられたことになっている可能性が高い。

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