君の世界からわたしが消えても。

 ……なんだか本当に甘く見てた、ミヅキに成り変わるってこと。


 そしてカナの記憶は、思った以上のそのさらに上をいくくらいに、作り替えられてしまっている。


 こうして目を覚ましたカナだけど、本当のことを知ったらまた眠りに落ちちゃうんじゃないのかな。


 そうしたらもう二度と、目を覚まさない気がする……。


「美月? どうした?」


 急に視界に映りこんだカナの顔。


 それに驚いて顔を上げると、イチも心配そうにわたしを見ていた。


「なんでもないよ」


 曖昧に笑って流したけど、ふたりはまだわたしの様子を窺うみたいにちらちら見てくる。


 わたしはそれに気付かないふりをした。


 机の上のお盆に目を向けると、空っぽになった食器。


 お皿にあったはずの黒豆も、全部なくなっていた。


 わたしが考え込んでいる間に食べちゃったんだ。


 カナが豆をつまむところ、ちょっと見たかった。


 短いため息が、口の端から漏れていった。

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