君の世界からわたしが消えても。

 ふと、思い出した。


 “いつでも会えるだろ。会おうと思えば。”


 2年以上前、みんながいた、中学3年生の5月。


 思い出の丘でイチが噛みしめるように言った、この言葉を。


 口数の少ないイチが言うことにはいつだって重みがあって、胸にじわりじわりと浸透する。


 この言葉だって、例外じゃない。


 いつでも会える距離にいた人が、突然遠くに行ってしまうこともあるっていう現実。


 太陽がのぼって、また沈んで。


 誰もがわかっている、日々繰り返される“当たり前”の現象と同じように、幸せな日常は明日もちゃんとやってくる、そんな能天気な思い込み。


 今日も、明日も、明後日も、隣には大好きな友達がいて、大切な家族がいて。


 そして、好きな人が笑っていて。


 ……そんな日常が、明日も変わらずに巡ってくるって、そう思ってた。


 隣に大切な人達が揃うことが当たり前のことだと、本当にそう思っていた。


 それが、普通のことなんだって。


 でも、それは違うってことを思い知らされた。


 イチの言ったこの言葉が叶わなくなっちゃうなんて、あの時は思っていなかった。

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