君の世界からわたしが消えても。
こんなふうにして、育ってきたから。
誰にもわたしたちを見分けることができなかったから。
だからこそ、わたしたちがカナを好きになったのは、必然だったんだと思う。
「みづきちゃんに、はづきちゃんだよね!」
そう言って突然目の前に立った、同じ小学校1年生、同じクラスの男の子。
名前なんて知らなかった。
今までこんなふうに話しかけられたことなんかない。
だから、びっくりしたっていうのもあったけど、それより驚いたことがあった。
その子は、『みづきちゃん』と言った時にはミヅキの方を向いて、次に『はづきちゃん』とわたしの方を向いた。
まるで、わたしたちふたりの区別ができているかのようなその仕草に、本当に驚いた。
ミヅキもわたしと同じことを感じたみたいで、わたしと視線を合わせて、目を真ん丸に見開いていた。