君の世界からわたしが消えても。

 この晩、わたしは夢を見た。


 それは、遠く感じる過去の記憶。


 わたしたち4人がいた頃の、温かくて幸せで少しだけ苦い、そんな夢だった。


 息が白く染まるほど寒い、2月10日。


 その日のことを、中学1年生のわたしたちの姿を、夢で見た。



 ――わたしの隣には当たり前のようにミヅキがいて、わたしたちの後ろには並んで歩くカナとイチがいる。


 高校2年生の現在のわたしが、夢の中で中学1年生だったわたしを見ている。


 自分の姿を客観的に見るなんて、少し変な光景。


「もう、奏汰もイチも、ついて来なくていいのにねっ!」


 不服そうに頬を膨らませて、わたしにそう言ったミヅキ。


「たぶん、ミヅキのことが心配なんだよ」


 わたしはそれに、苦笑いで答えていた。


 ……ああ、そういえばこんなこともあったな、なんて思う。


 夢の中なのに思考があって、過去の自分を眺めるなんて、まるでタイムスリップしたみたい。


 この日は、4日後に迫ったバレンタインデーの材料やラッピング用品を買いに行こうと、ミヅキとふたりで約束した日だった。
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