君の世界からわたしが消えても。
小学生の頃から仲が良かったわたしたち。
わたしとミヅキは、バレンタインには毎年カナとイチにチョコをあげていた。
わたしはトリュフ、ミヅキはチョコチップ入りのクッキーを作るのが定番だった。
お菓子の中でカナはクッキーが好きで、イチはチョコが好きだった。
柔らかい雰囲気のカナが甘いものを好きだと言っても違和感はないけど、イチが甘党だって初めて知った時は大笑いしたんだよね。
強面に甘党とか、全然イメージが違うよねって。
実際は、カナは甘いものも好きだけど、それより辛いものが好きだし、コーヒーはブラック。
イチは甘いものが大好きで、コーヒーにはミルクも砂糖もたっぷり入れる。
お互い、本当に見た目にそぐわない味覚の好みだった。
トリュフとクッキーは、小学校の頃から変わらずに、毎年同じものを作り続けている。
わたしとミヅキはお菓子を作るのが好きで、たまに作ってはカナとイチに食べさせていた。
彼らがその中で一番好きだって言っていたのが、トリュフとクッキーだった。
お菓子を作るのは好きだけど、不器用なわたしたちは失敗することも多かった。
唯一失敗せずに作ることができたのがこの2種類で、自分でも正直、お店で売っているのに引けをとらないくらいおいしいんじゃないかと思ってる。
だからこの日もその材料を買いに来たんだけど、中学1年生のこの年のバレンタインは、今までとは少しだけ違っていた。
……それは、カナとミヅキが付き合っているということ。