君の世界からわたしが消えても。

「ふたりしてなーに話してんの?」


「うわあっ!?」


 あの時、耳の近くで聞こえたはずの声は、今は少し遠くから聞こえた。


 わたしとミヅキの真ん中に立ち、肩を組むような体制で割り込むようにして会話に入ってきたのは、カナ。


 それをわたしは今、真上から見下ろしている。


 肩を組まれているから、距離が近い。


 それを見て、当時の心境を思い出した。


 あまりの近さに、心臓がバクバクになっていたこと。


 それが表情に出ないように、なんでもないことのような顔で立っていたこと。


 ……だけど、内心すごく悲しかったこと。


 そういうことを、全部思い出した。

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