君の世界からわたしが消えても。
……知ってたよ。
カナがこうやってスキンシップをとって、少しずつミヅキとの間にある“友達”っていう壁を壊そうとしていたこと。
だから、カナに触れられて嬉しいのと同時に、すごく悲しかったんだよね。
きっとわたしまで巻き込まなきゃ、カナも恥ずかしかったんだろうなあ。
今ならそう考えられるけど、中学生のわたしはただつらいだけで、ほかのことを考える余裕なんてなかった。
今改めてこの時の光景を見ても胸はちくりと痛むけど、その痛みは僅かなもの。
「奏汰には内緒だよーっ」
そう楽しそうに言うミヅキにも、目を細めて微笑んでいるだろうカナにも、不思議と嫉妬は込み上げてはこなかった。
中学1年生のわたしの肩にはもう、カナの手は触れていない。
それを見つめると、その時の虚しさとか寂しさが心の中にじわりと広がっていったけど。