君の世界からわたしが消えても。

「美月、葉月もお返しなにがいいか考えておけよー!」


 カナが、わたしの名前を呼んでいる。


 だけど、いつだって最初にミヅキの名前を呼ぶ。


 わたしの名前を呼ぶ時とは違う、甘く優しさをはらんだ声で。


 カナのことが好きで、よく見て、声を聞いていたからこそわかる、些細な違い。


 傍にいると、気付きたくないことにまで気付いてしまう。


 さっきまでわたしの隣を歩いていたミヅキは、わたしの少し先をカナと肩を並べて歩いている。


 ……わたしは、ぽつんとひとり。


 その姿を見下ろして、ひどく寂しそうだと思った。


 自分のことなのに、どこか他人事のように。


 そっと手を繋ぎ、仲よさそうに歩くカナとミヅキ。


 そんなの、もう何度も見てきたはずの光景。


 だけど、見るたびに泣きたくなる。
< 136 / 298 >

この作品をシェア

pagetop