君の世界からわたしが消えても。

 なぜかはわからないけれど、彼はわたしたちを見分けることができた。


 本人もそれが不思議らしく、周りの友達に「なんでどっちがどっちかわかるの?」なんていう質問に、答えられずにいた。


 ずっと、友達がいなかったわたしたち。


 幼稚園でも、ふたりでずっとくっついて遊んでた。


 初めて呼ばれた名前。


 初めて、わたしが“ハヅキ”だとわかってもらえた瞬間。


 ちゃんと“わたし”の名前を呼んでもらえたことが、嬉しかった。


 たったひとり、わたしたちを認識できる目の前の男の子に、心から惹かれた。


「ぼくは、かなたっていうんだよ!」


 放課後の、掃除当番。


 誰も確信をもって呼ばないわたしたちの名前を、はっきりと口にした目線の同じ男の子。


 ……この瞬間、わたしは彼を好きになった。


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