君の世界からわたしが消えても。

 視線を移せば、さっきまでひとりで歩いていたわたしの隣に、イチがいた。


 そして、こうやって何度もイチのさりげない優しさや気遣いに救われていたなあ、って思い出す。


 わたしがカナに対して恋心を抱いていたことを、イチが知っていたこと。


 それに気付いたのは、ついこの間のことだった。


 だけど、イチはきっとこの頃にはすでに気付いていて、だからこそ隣にいてくれたんだと思う。


 今更気付くなんて遅いかもしれないけど、イチには感謝してもしきれないくらい感謝してる。


 イチの隣にいると、カナの隣にいる時に感じる変な緊張感とは違う、ゆったりとした時間が流れるように感じていた。


 安心感、っていうのかな。


 お日様を浴びてふわふわ暖かい、心地いいタオルで優しく包まれているような、幸せな気持ち。


 それは今もずっと、変わってない。
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