君の世界からわたしが消えても。
わたしが上手く作れるお菓子は、本当はトリュフだけ。
レシピを見てちゃんと作ってもミヅキほど上手く焼けなくて、三度目の正直でやっと納得のいくものを作ることができた。
きっと、ミヅキのものとは全然味が違うんだろうなあ……。
そう思うと、カバンを持つ手に力が入った。
毎年作るから、ミヅキはその度に改良を重ねて腕も上げて、本当においしいクッキーを焼いていた。
完全にオリジナルのミヅキのクッキーを焼くことは、わたしにはできない。
カナはきっと、これがミヅキの作ったものじゃないってわかるんじゃないかな。
この少しの違和感にカナが気付くのか、緊張。
記憶を取り戻すきっかけになってくれるかという、期待。
……その中に、わたしはひっそりと別のものも混ぜ込んだ。