君の世界からわたしが消えても。

 イチとの出会いも、この時だった。


「あと、これ! ともだちのイチ!」


 カナはゴミ捨てから戻ってきたばかりの男の子の腕を引っ張り、わたしたちの目の前に半ば無理矢理立たせた。


 紹介されたのは、ほうきを持っている、カナより一回り大きな男の子だった。


 それが、イチ。


 カナを初めて見た時の第一印象は、優しそう。


 雰囲気がふわふわとして、柔らかかったから。


 そして目の前に立った少し大きな男の子、イチの印象はというと、『怖い』だった。


 天使みたいなカナとは真逆の、ガタイが良くて硬い表情の男の子。


 正直言って、初めてイチを見た時は、怖くて怖くて仕方なかった。


 だけど……。


「……はづき、ほこりついてる」


 いきなり呼ばれた名前、前髪に触れた手。


 急に目の前に大きな影が重なって驚いたけど、もっと驚いた。


 彼も、わたしが“ハヅキ”だってわかることに。

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