君の世界からわたしが消えても。
繰り返し、おいしいよと呟きクッキーを口に運ぶ先生に、なぜだか涙腺が緩む。
続きを話したいのに、唇を噛み締めていないと泣いちゃいそう。
「……はづきちゃん、きみがなにを言いたいのかは、ちゃんとわかっているよ」
席を立ち、わたしの頭をぽんぽんと一定のリズムで叩く先生の手は温かくて、言われたその言葉にまた強く唇を噛み締めた。
いろんなことがこの短期間に起こって悩んでいること、つらい立場に置かれていることの苦しさ。
たくさんの選択肢から答えを選ぶこと、どうしてわたしがクッキーを作ったのか。
カナと、ミヅキと、わたしの関係性。
……わたしが決心したこと、なにをしようとしているのか。
おじいちゃん先生はそういうことを全部知っていて、わたしの心を解きほぐすかのように、わたしの代わりにひとつひとつそれらを口に出していった。