君の世界からわたしが消えても。

 わたしは今でも覚えてる。


 はっきり、覚えてるんだよ。


 目の前の出来事が夢か現実かの区別もつかないまま、そこに立ち尽くしたあの日を。


 大切な人を失った、あの日を。


 『ミヅキはここにいないこと』、それを受け入れなくちゃいけないって恐怖を覚えたこと。


 ……目の前が真っ赤に染まって、尊い命がひとつなくなった、これから忘れることはないだろうあの日。


 涙を流し続けた日。


 ミヅキが、道路の真ん中で横たわっているのを見た瞬間のこと。


 その隣で倒れているカナの姿。


 どれもこれも、ありえないくらい鮮明に覚えている。


 怖くて、痛くて、つらくて。


 ごちゃごちゃになった感情が胸を占めた時の感覚だって、覚えてる。


 ――中学3年生、卒業間近の冬の日。


 わたしはこれから先、大切な人を失った日のことを忘れることはないだろう。


「明日は……」


 誰に聞かせるわけでもなく呟いた独り言。


 過去の私たち。


 5月の風に揺られた残映が、そこにある気がした。


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