君の世界からわたしが消えても。

 なんとも言えないような顔でクッキーを見つめるカナに少しの不安を抱きながら、イチの隣に戻って椅子に座る。


 じっと手元のクッキーに視線を落としているカナに、ドキドキしながら「開けてみて」と促せば、彼は丁寧な手つきでそれをほどいていった。


 緊張と気恥ずかしさが入り混じって、心臓が早鐘を打つ。


 どんな反応をされるのか、怖くて見ていられない。


 けど、目をそらすこともできない。


 カナ、喜んでくれるかな?


 おいしいって言ってくれるかな?


 ……記憶を取り戻すきっかけになるかな?


 そんなふうにぐるぐると考えて、膝の上できつく握った手のひらは汗ばんでいた。


 緊張も不安も大きい。


 だけど期待もあって。


 それでも、やっぱりなんだか怖くて。


 ……そして、そんなわたしの心配事は一瞬で吹き飛んだ。
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