君の世界からわたしが消えても。
「うわ、すご……!」
するりとリボンがほどけて、より一層強く広がった甘い香り。
感嘆する声が聞こえて、瞳を開いて驚くカナの表情が目に飛び込んだ。
「わざわざ作ってくれたんだ?」
「う、うん! そうだよ」
嬉しそうに緩んだ顔でそう言われて、喜んでくれてるんだとわかって安心した。
カナにつられて、わたしの顔もほころぶ。
綺麗に焼けた、チョコチップ入りのクッキー。
それを見てカナは微笑んでくれた。
すごく喜んでくれているみたいで、本当に嬉しい。
「それだ」
「え、急になに?」
今まで黙ってたイチが突然声を上げたから、わたしは首を傾げて見つめた。
イチは納得したような顔で、腕を組みながらうんうんと頷いている。
その姿がなんだかおじさんみたいで笑えてくる。
……怒られそうだから言わないけど。
「いや、お前に会ってから、なんかすげーいいニオイするって思ってたから」
「イチにはやらないからな!」
「なんでだよ」
クッキーをイチから守るように腕に抱え込むカナを見て、作ってよかったなあって心から思った。
ふたりのやりとりも、面白くて。
いつぶりだろうって思っちゃうくらい、穏やかな気持ちになった。