君の世界からわたしが消えても。

 自分の気持ちに終止符を打つために作った、恋心を混ぜ込んだクッキー。


 カナが記憶を取り戻してくれますように、と祈りも込めた。


 それを今、カナが食べてる。


 ……なんだか、泣きそうだ。


 おいしいって言いながらクッキーを食べ進めるカナを見て、これで終わりなんだなあってしみじみと思う。


 カナがそれを食べ終える瞬間に、わたしの長かった初恋も終わるんだ。


 カナを好きだったわたしがいなくなって、ただの親友にちゃんと戻る日常が明日には来る。


 明日には、昨日までと違うわたしがいるはず。


 桜の丘で胸に秘め、想像していた未来が、やってくる。


 『明日は、違うわたしになれるかな』って――。
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