君の世界からわたしが消えても。

 でも、やっぱり変わったんだ。


 前とは、違うんだね。


 伸びた髪を後ろでちょこんと結んでいるのは初めて見たし、身体の線も以前より細い。


 当たり前だったはずのミヅキの姿は、ここにはない。


 そして。


「美月、今日までいろいろ迷惑かけてごめんな。ありがと」


 カナは、わたしを“ミヅキ”と呼ぶ。


 そのことに、いつの間にか抵抗もなくなっていて。


「大丈夫だよ、奏汰」


 最初は慣れなかった彼の名前を呼ぶことに、いつしか戸惑いもなくなった。


 嬉しそうに微笑むカナに、わたしも同じように笑みを返して。


 そして、思った。


 いなくなったのはミヅキじゃなく、失われたのはカナの記憶でもなくて。


 本当に消えてなくなったのは、“わたし”なんじゃないか、って……。
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