君の世界からわたしが消えても。

 目頭が熱くなるけど、奥歯をぎゅっと噛みしめて耐えた。


 泣くな、笑え。


 自分にそう言い聞かせて、もう何度も堪えた涙を、何度も流してしまった涙を、我慢する。


 こういう気持ちは、押し込めておかないとだめだから。


 今は自分の感情を抑えて、カナのことだけを考えるべきだから。


 だって、これから傷つくことになるのは、カナなんだ。


 これからなにが起こるのかなんてわからない。


 わかっているのは、カナがこれから帰る場所には、安息なんてないってことだけ。


 カナが記憶を取り戻せるのかは、わからない。


 ミヅキのふりをして、カナを傷つけ続けているわたしが言うことじゃないかもしれない。


 だけど、これ以上カナを傷つけるようなことは、したくないから。


 だから、わたしがしっかりしないといけないんだ。


 泣き言は、言っていられない。

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