君の世界からわたしが消えても。

 ミヅキに誓いを立てるように、胸元のペンダントを右手できつく握り締めたら不思議と心が落ち着いて、なんだか勇気もわいた。


 ミヅキが応援してくれているのかな。


 ……なんて、都合のいいように思っておく。


 本当に自分勝手だけど、今は前向きでいたいんだ。


 正しい答えを選ぶために。


 カナを傷付けないために。


 ミヅキとの約束を守るために。


 頑張るから、どんなことになっても大丈夫だよ、わたしは。


 頭に感じた温かいカナの手を、失いたくない。


 守りたいんだ。


 だから、気丈に振る舞うことを、どうか見逃してね。


 ひとつの視線がわたしに注がれている。


 だけど、それには気付かないふりをした。


 横目でばれないようにひっそりと見た、その瞳に潜む意味。


 それを知っていながらなにも言わないでいるわたしを、どうか許してね。


 大丈夫だよ、イチ。


 ……だからね、お願い。


 安心してよ、イチ。


 お願いだから、笑ってよ。


 大丈夫だから、そんなに心配そうな目で、わたしを見ないで――。
< 197 / 298 >

この作品をシェア

pagetop