君の世界からわたしが消えても。
「短い間でしたが、お世話になりました」
同じ病室でお世話になったおじさんたちに3人で挨拶をすると、「これからも仲良くな」、「元気でな」と、たくさんの言葉をかけてもらえた。
それに笑って返事をして、部屋を出た。
静かな廊下を、3人で歩いていく。
カナの荷物は、病室を出てすぐにイチが力ずくで奪い取った。
カナはそのことを不満そうにしていたけど、病み上がりだろとイチが凄んで言えば、大人しく引き下がった。
それにしても、なんだか今日はやけに病院内が静か。
いつも擦れ違う看護師さんたちの姿も見えない。
今までそんなことを思ったことはなかったんだけど、こうしてみると廊下って真っ直ぐ続くだけで結構殺風景だ。
時折壁に絵が飾られていたりもするけど、人がいないとこんなにも冷たい印象になるんだね。
3人分の足音だけがこの長い廊下に反響していて、何度も来たはずのこの場所が、今日はなんだか全然違うように見えた。