君の世界からわたしが消えても。

「短い間でしたが、お世話になりました」


 同じ病室でお世話になったおじさんたちに3人で挨拶をすると、「これからも仲良くな」、「元気でな」と、たくさんの言葉をかけてもらえた。


 それに笑って返事をして、部屋を出た。


 静かな廊下を、3人で歩いていく。


 カナの荷物は、病室を出てすぐにイチが力ずくで奪い取った。


 カナはそのことを不満そうにしていたけど、病み上がりだろとイチが凄んで言えば、大人しく引き下がった。


 それにしても、なんだか今日はやけに病院内が静か。


 いつも擦れ違う看護師さんたちの姿も見えない。


 今までそんなことを思ったことはなかったんだけど、こうしてみると廊下って真っ直ぐ続くだけで結構殺風景だ。


 時折壁に絵が飾られていたりもするけど、人がいないとこんなにも冷たい印象になるんだね。


 3人分の足音だけがこの長い廊下に反響していて、何度も来たはずのこの場所が、今日はなんだか全然違うように見えた。

< 198 / 298 >

この作品をシェア

pagetop