君の世界からわたしが消えても。
01 日没

「もう、あれから1年以上経ったよ……」


 4月、夕方16時半。


 1年間着てしっくりと身に馴染んだ制服をまとって、わたしはひとり、立っている。


 丘の上、町を一望できる思い出の場所に。


 太くて立派な幹を持つ桜の木が、わたしを守るように、取り囲むようにして何本も植えられている。


 足元は、ピンクの花びらの絨毯。


 踏めば、柔らかく沈む。


 その感覚が、好き。


 ここから見るわたしの住む町は、いつ見ても本当に綺麗。


 一番好きなのは、この時間に見る景色。


 町全体がオレンジ色に照らし出され、そのうち紫がかり、だんだんと黒に侵食されていく。


 この光景を、もう何度眺めたんだろう。


 思い出して数えようとしても数え切れないくらい、何度もここへ来た。


< 2 / 298 >

この作品をシェア

pagetop