君の世界からわたしが消えても。
01 日没
「もう、あれから1年以上経ったよ……」
4月、夕方16時半。
1年間着てしっくりと身に馴染んだ制服をまとって、わたしはひとり、立っている。
丘の上、町を一望できる思い出の場所に。
太くて立派な幹を持つ桜の木が、わたしを守るように、取り囲むようにして何本も植えられている。
足元は、ピンクの花びらの絨毯。
踏めば、柔らかく沈む。
その感覚が、好き。
ここから見るわたしの住む町は、いつ見ても本当に綺麗。
一番好きなのは、この時間に見る景色。
町全体がオレンジ色に照らし出され、そのうち紫がかり、だんだんと黒に侵食されていく。
この光景を、もう何度眺めたんだろう。
思い出して数えようとしても数え切れないくらい、何度もここへ来た。