君の世界からわたしが消えても。

 夕日を見つめたまま言ったから、イチがどんな顔をしているのかなんてわからなかった。


 だけど、隣で彼が動く音がしたから、わたしの気持ちを汲んでくれたんだって思う。


 イチはなにも言わずに、そっと去って行った。


 遠くなっていくイチの足音を聞きながら、心の中で「ありがとう」と呟いて、カナに視線を向けた。


「……奏汰」


 小さな声で、真横にいるカナの名前を呼ぶ。


「どうした?」


 優しい声で、カナは答える。


 それが嬉しくて、だけど、なんだか悲しい。

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