君の世界からわたしが消えても。
名前を呼んだまではいいけれど、その後の言葉がなかなか出て来なくて、しばらくカナと見つめ合う。
「どうした? 美月」
カナは困ったように笑い、なにも言わないわたしの頭をそっと撫で、距離を詰めてきた。
カナと、ふたりきり。
少しでも動けば肩が触れる、そんな位置にカナはいる。
あまりの近さにドキドキして目を見られなくなって、顔をそらした。
ミヅキに対する罪悪感を、カナについた嘘を、この時だけは忘れていたかった。
「カナ……」
震える唇、心。
全部全部、強く抑え込んで。
息をするのと同じように、前までは当たり前だった呼び名を一度だけ口にした。