君の世界からわたしが消えても。
11 月光
欲しがらないと、なにも手には入らない。
なにも手に入らないのなら、失うこともない。
暗闇の中、ひとりで手探りしながら進むのはやっぱり怖いし、踏み出した一歩がちゃんと地面を蹴ることができる保障なんてどこにもない。
進んだ先は行き止まりの洞窟かもしれないし、足を踏み出したそこに固い地面はないかもしれない。
ゴールになんてたどり着けないかもしれない。
でも、自分で選んで進まなきゃなにも始まらないし、終わることもできない。
その場で足踏みしていても、なにも解決しないんだ。
知ってた、そんなこと。
全部わかってた。
だから、わたしは手を伸ばした。
欲しがって、期待した。
そこに必ずゴールがあると信じて。
光が差すと信じて。
信じて、疑わなかったんだ――。