君の世界からわたしが消えても。
「またここにいたのか、葉月」
月の光が降り注ぎ、星も空に輝いている夜の8時。
わたしはいつものごとく、思い出の場所にいた。
そんなわたしの後ろから声をかけてきたのは、言わずもがな、イチだった。
「……うん」
振り返らずに、素っ気なくそう返す。
そんなわたしの様子になんか、とっくの昔から慣れているんだろう。
イチは全く気にする素振りも見せず、私の隣へと静かに腰を下ろした。
昼間と違って涼しいから、太陽光からわたしたちを守るようにしてそびえる桜の木の下でなく、いつもより少しだけ開けたところに、今は座ってる。